ITパスポート試験
情報ビジネスコースでもう一つ重視している資格は、ITパスポート試験です。
「情報」と名のついたコースである以上、やはり情報処理に関する基礎知識を身に付ける必要があります。ITパスポート試験の参考書は、必要な知識が体系的に整理されており、非常に良い目標となります。また、他の検定試験が民間資格であるのに対し、国家試験である点も魅力です。
ただ問題は、試験の難易度にあります。合格率は4割~5割あり、情報処理技術者試験の中では簡単だと言われる試験ですが、それはある程度IT関係の仕事の経験のある人を含めた合格率です。ほとんど知識ゼロの状態から勉強を始める短大生にとっては、テキストのホボすべての用語が難しく感じるはずです。例えば、コンピュータの知識では、K、M、G、T、といった単位から説明していく必要がありますし、ISO9000といった社会人にとっては常識的な用語も解説する必要があります。
なお、試験の短期合格だけを考えれば、体系的な解説よりも問題演習を中心にした方が効率的です。しかし、付け焼刃の知識だと次のステップ(基本情報技術者)を目指す場合にまた基礎から勉強しなおさなければいけません。また、最初の受験に失敗して、2度目、3度目の挑戦をする場合は、最初に体系的に勉強している人の方が成績は伸びます。
というわけで、短大では、現在「情報科学」の授業でITパスポート試験の参考書を使って、体系的な授業を進めています。ただ、これも次のような問題を抱えています。
(1)範囲が広いので、15コマの授業ではとても全部は解説できない。
これについては、夏休みの補講を検討しています。例年は、ITパスポート試験対策は受験指導校と提携したエクステンション講座(別料金)で行っていたのですが、今年の補講は私が行いますので、学生の料金負担はなくなります。
(2)1回聞いただけでは、理解が深まらない。
これは、どの科目にも言えることだと思います。これについては、後期の「経営学概論」でも同じテキストを使い、2周目の解説をしようと考えています。ただし、「情報科学」はテクノロジ系に重点を置き、「経営学概論」はマネジメント系に重点を置きます。
(3)すべての学生がITパスポート試験を目指しているわけではない。
「情報科学」は、卒業と同時に取得できる「情報処理士」のための授業でもあります。したがって、わざわざ国家試験を受験しなくても情報処理士の資格だけで十分と考える学生にとっては、必要以上に難しい授業になっていると思います。
結局はどのレベルの学生に合わせた授業を行うかの問題になりますが、国家試験に挑戦してみたいと考える熱心な学生がいる以上、それに合わせた授業が一つや二つあっても良いかと思っています。その代わり、私の担当する他の授業では少し易しい内容のものもあるので、全体ではバランスを取っています。
何ぶん、私にとっても初めての経験で、試行錯誤をしながら進めています。幸い、昨年より随時受験ができる試験になり、スケジュールの自由度は高くなっています。1回生のうちに2回ぐらい挑戦してもらうつもりで、合格までサポートしていきたいと思っています。