情報処理士、秘書士、ビジネス実務士について
本学のパンフレットの情報ビジネスコースのページを見ると、「取得できる資格・免許」として、情報処理士、秘書士、ビジネス実務士の3資格が挙げられています。これらの資格は、社会人にはなじみが薄いと思いますので、少し説明させていただきます。
これらは、(一財)全国大学実務協会の認定による資格です。この団体の認定を受けた大学・短大で2科目4単位の必須科目と選択科目16単位以上を取得すれば認定されます。所定の単位を取得すると、卒業時に資格が授与されるというものです。真面目に授業を受けて定期試験を受ければ、特別の試験勉強をしないで資格が取得できることが最大の特徴です。
また、大学・短大のみが対象ですので、この点で専門学校との差別化が図られています。
それぞれの資格の特徴について、私個人の意見を述べると、次の通りです。
「情報処理士」
情報科学と情報基礎演習の必須科目と選択科目を取得すれば認定されます。あくまで情報処理の基礎を身に付けた証で、プログラミングは必須ではありません。プログラマやSE向けというより、「パソコンやITに詳しい事務員」といった感じです。
知識面では、国家試験のITパスポート試験には及びません。ただし、ITパスポートにはない実技系(各種のパソコン演習)の授業がかなり組み込まれているので、実践的ではあります。
また、国家試験と違って、名称にズバリ「情報処理」と入っているのはアピール度大です。
「秘書士」
秘書学概論と秘書実務の必須科目と選択科目を取得すれば認定されます。選択科目には、パソコン、簿記、心理学、経営学等があり、オフィスで働く秘書や事務員に必要なスキルがひととおり身に付くようになっています。
人気の秘書技能検定(秘書検定)と重なる部分も多いのですが、あえて比較すれば、秘書検定2級と準1級の間ぐらいの価値と言えると思います。演習を含む20単位を取得する必要がありますので、筆記試験だけで要領が良ければ1か月ぐらいの勉強で合格できる2級よりは価値があると思いますが、筆記試験が難関で面接試験もある準1級には及びません。別の見方をすれば、本学で秘書士を取得できるのであれば、秘書検定3級・2級はあまり意味はないことになります。また、在学中に準1級に合格できた学生は、卒業時に5,000円を払って秘書士の認定を申請する必要はないかもしれません。
「ビジネス実務士」
ビジネス実務論とビジネス実務演習の必須科目と選択科目を取得すれば認定されます。必須科目では、ビジネスの基礎知識や会議や仕事のスケジューリングといった、事務系の新入社員に必要とされる共通スキルを勉強します。大企業に入社すればこれらは社内研修でしっかり教育されますが、中小企業ではそのような機会に恵まれない場合も多いですので、大学で教育を受ける意味があると思います。また、選択科目には、パソコン、簿記、心理学、経営学等があり、オフィスで働く事務員に必要なスキルがひととおり身に付くようになっています。
社会人が「ビジネス実務」と聞くと、特定業種や特定企業での仕事のノウハウというイメージを持たれるでしょうが、残念ながらそういう資格ではありません。特定の業種を想定しないでビジネスの基礎を広く浅く身に付けるといった性格の資格です。
秘書士と重なる部分も多いのですが、秘書士は一般職(補助職)向け、ビジネス実務士は総合職向けといった感じです。
各資格の選択科目については、共通するものも多いので、3つ全部取るのに60単位が必要なわけではありません。2年間で無理なく3つの資格全部の取得が可能です。また、キャリアデザイン専攻であれば関連授業の登録は可能ですので、情報ビジネスコース以外のコースの学生でもこれらの資格の取得は可能です。
なお、これらの資格を就職活動でアピールしたいと考えた場合、いくつかのハードルがあります。第1に、卒業時に認定されるため就活の履歴書には「○○士取得予定」としか書けません。第2に、他の大学・短大の同様のコースを修了した学生も同じ資格を保有しているので差別化が難しいです。第3に、単位取得と連動するため学位(短期大学士)や学業成績の評価と重なってしまいます。教員の立場から言えば、これら3資格を取得するだけでなく、1つでも多くの「優」を取って欲しいという気持ちもあります。
しかし、保有資格数が少ない学生にとっては心強いと思います。また、例えば「ITパスポート試験」と「情報処理士」といったように、同分野の他の資格と並べて書けば資格欄に厚みが出ます。さらに、本学のように「生活科学科」「キャリアデザイン専攻」といった幅広い分野にまたがる学科・専攻である場合には、専門分野を明確にする効果も期待できます。「情報処理士」「秘書士」「ビジネス実務士」と書いてあれば、ITやビジネス分野が専門だと判りやすくなります。